Story~初恋

日常の片隅で
スポンサーリンク

わたしの初恋は幼稚園のとき

同じリス組のヒカルくんは、肌の色が白くて髪の毛は茶いろ、まつ毛が長く大きな瞳を持っていた。
とても大人しくて、たまに話かけても「ぼ、ぼくは…」と、恥ずかしそうにしている。
そのシャイな感じが可愛くて、わたしの小さなストライクゾーンにぴたっと嵌った。

いつまでも進展しない恋に募るものがあったのだろう。
わたしは、ヒカルくんに何だかんだ理由をつけて近づき、タイミングを見計らって頬っぺたにチュウをした。
ヒカルくんは、顔を赤くし、驚いたように大きな瞳をさらに大きくしていた。
今思えば、ヒカルくんには迷惑だったかもしれない。ごめんなさい。

しかし、すっかり有頂天になったわたしは、その日、家族にこのことを喜び報告した。
「ばかねぇ」
と母は笑っていたが、
「でも、ヒカルくんて…」
と何だか、よそのおばさんのような顔になり、ヒカルくんの吃音のことをぼそっと口にした。

当時は吃音がなんのことか知らなかったが、母がヒカルくんとの結婚に大賛成じゃないことだけは理解できた。
ヒカルくんの気持ちも確かめていないのに、わたしはヒカルくんと結婚する気満々だったのだ。
わたしのお熱は、ふたりが別々の小学校へ行くまで続いた。

本人やそのご家族にとっては治したい症状なのだと思う。将来のことを考えると不便なことや面倒なことも多いだろう。
だからこんなことを言っていいのかは分からないけど、

園児のわたしには、ヒカルくんの吃音はとてもチャーミングだったのだ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました