父は、わたしが小学生のときに蒸発し、ずっと音信不通だった。
ある日、警察から電話があり、父がひとりアパートで亡くなっているのが発見されたと連絡があった。
その父の告別式(と、いってもわたし達家族だけの寂しい式だが)に、
「実はあなたとは異母兄弟にあたる者です」
と、わたしにしずしずと近寄って来るものがいた。
どこから見ても狸なのだが、その目には涙まで浮かんでいるので何だか無碍にもできず、
「このあと一緒に火葬場までいらっしゃいますか?」
と誘ってみた。
こうして母と姉、そして狸と、父の骨を拾うことになったのだが、
その骨上げ台に、細くてもう崩れかけてはいるが尻尾らしき骨があったのだ。
思わずわたしは自分のお尻を触っていた。
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