認知行動療法と寅さん

認知行動療法
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ものごとの捉え方や考え方で気持ちがつらくなったり、ストレスと感じたりすることがあります。

例えばわたし、
めまいの症状が出ると「あぁ、わたしはきっと一生健康にはなれないんだ
「きっと」とか「一生」とか何の根拠もない考え方です。


自分でそう考えて、自分で絶望して、自分で自分のこころと体を虐めている。

認知行動療法

それに気づくための認知行動療法、ご存じですか?
うつ病や自律神経失調症の治療にも使われているそうですが、身体に症状が出ていなくても、こういうネガティブ思考はやりがちです。

そんな考えクセに気づくように、認知行動療法には認知のゆがみを分類した「推論の誤り」が10種類あります。
例えば、100%じゃなければ意味がなく完全でなければ失敗と考える「全か無か思考」
人の考えを深読みする「結論の飛躍」など。


わたしがよくやるのは「すべき思考」
~しなければならない、~すべきなのに、と人にも自分にも腹を立てがち。


「若いんだからお年寄りに席を譲るべき」
若者だって体調の悪いときがあり、見た目では分からない持病があるかもしれない。
もしかしたら恥ずかしがり屋さんで言い出せないのかもしれない。
そもそも、わたしがむっとすることではない。
なんならわたしも席を譲れないことだってあるくせに。

それで、寅さんである。

2019年の公開で50作目となる映画「男はつらいよ」シリーズ。
実はわたし、3年前まで、まともに観たことがなかった。
ほのぼのとした人情話、ありがちな話に違いないと思っていたのだ。
たまたま母が録画していた「男はつらいよ」を観たとき、

それは、ちょっとした驚きだった。

主人公の寅さんはフーテン(定まった住所や職業を持たない)である。
昔、父親と喧嘩して家出して以来、気の向くままの放浪生活。
たまにふらっと帰る柴又には妹がいるが、異母兄弟で、寅さんのお母さんは本妻さんではなく、なかなか複雑な事情がある
さくらの上にはもう一人兄がいたが、そのお兄さんも父親もさくらの母親も亡くなっており、ほのぼのとは言えない。
そして、てっきりイイ人だと思っていた寅さん。

決して、ただのイイ人ではなかった。

柴又の実家の隣りには印刷所があるのだが、そこのタコ社長や従業員に向かって、結構な罵詈雑言をはく。
労働者諸君、安い賃金で今日も長時間労働ご苦労さまです。
コツコツ働いている人たちをバカにするような言い方だ。


美人のマドンナが寅さんを訪ねて柴又に来るのがお馴染みのパターンだが、さくらやおばちゃんがせっかくご飯を作ってくれても、こんな不味い庶民が食べるような物しかなくて、マドンナに申し訳ないとくる。
なんで彼女(マドンナ)をもっともてなさないんだと、さくら達は怒られるのだ。
勢いあまって、さくらを投げ飛ばす場面もあった。傍若無人である。
おまけに惚れっぽい。だらしないことこの上ないデレデレぶりだ。

すべき思考、0か100思考のわたしは、驚いてしまった。

日本のお正月に家族で観る映画なのに。
寅さんはイイ人だと聞いていたのに。
みんなに愛されるキャラクターなはずなのに。

映画を何本か最後まで観れば、
寅さんは傷ついた人にほっとするような言葉を掛け、困っている人には思いっきり手を差し伸べる。
さんざ美人にデレデレしても、相手が本気になると身を引く。自分がフーテンだからだ。
そういう男気のようなものが寅さんにはある

でも、どうやら愛されるのは、そういうところだけではなく、先の不良な部分や欠点があるからなのだろうと、寅さんを観ていて思い至る。


あんな目にあっても、家族や周りの人、そして観ている国民は寅さんを受け入れているらしい。
いくら男気があっても、わたしだったら、一度あんな言い方をされただけで一生(笑)許さないだろう。
すべき思考で人にむっとするわたしが、寅さんを丸ごと受け入れるのは中々難儀だ
好きだけど、実際近くにいたらちょっと迷惑かもしれない。

イイ人はもっと完璧にイイ人であるべきだと思っているわたしに、
寅さんは新しい回路を繋いでくれた気がする。


寅さんが認知行動療法の成果を測るバロメーターとなるかもしれない。

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